砂漠の暑さに耐えながら、水を飲まずに重い荷物を運んで長距離を歩くことができるラクダは、「砂漠の船」と呼ばれ、砂漠の旅人たちにとって、欠かせないパートナーだ。
昔は、ラクダのコブには水が溜まっていて、ラクダはそれを少しずつ使って乾燥に強いのだと思われていた。
しかし、実際にラクダの体を調べてみると、コブの中は水ではなく、約四○キロもある脂肪のかたまりだった。
そこで、今度は、ラクダは水が足りなくなると、脂肪を分解して水に変えるのだという説が出てきた。
だが、この説も納得できない。 なぜなら、脂肪を分解して水にするには、たくさんの酸素が必要なのだ。
そんなに多くの酸素を肺で吸えるわけがないし、肺から水分が失われてしまうから、得することはないのである。
そこで、ある研究者は実際にラクダを飼って、次のような実験をした。
ラクダに水を与えずに、夏の砂漠で8週間過ごさせた。すると、体重が実験開始時に比べて約22パーセントも減った。このときの姿は、やせ細ってお腹がへこんでしわだらけになり、足も細くなっていた。命にかかわるほどではなさそうだが、長い旅や大変な仕事をさせるのには無理があるように見えた。
そこで、今度は水を与えてみると、 ラクダはバケツから水をゴクゴク飲み干し、 たった十分で元気になって外見も普通に戻り、何事もなかったかのようだったという。
人間は、こうはできない。体重の五パーセントの水分を失うと意識がおかしくなり、10パーセント失うと混乱が始まる。 砂漠みたいな暑い所では、12パーセ ントの水分を失ったら、死んでしまうだろう。
また、一気にたくさんの水を飲むことも、それを吸収することもできない。 だけど、ラクダは水分が減っても、血液の量が変わらない。
これと比べると、人間が水分不足に弱いのは、血液がすぐに濃くなって体温を下げられなくなるからである。
汗もほとんどかかず、尿も少ないラクダは、体中に水分をためていると思われる。もし、乾燥で水分が減っても、水を飲みまくれば、すぐにまた体中に広げられるようだ。