シャネルの五番は、シャネルスーツで有名なフランスのファッションデザイナー、シャネルが作った香水である。

 

マリリン・モンローが寝間着代わりにつけていたことでも話題になった。

 

発売されてから今日まで、世界中の女性に愛され続けている不朽の名作だ。

 

このシャネルの五番は、華やかでセクシーな香りで、都会的で大人な女性にぴったりだと多くの人が感じている。

 

しかし、香水の香りが強すぎて苦手だという人もいる。

 

特に、爽やかな柑橘系の香りが好きな若い女性は、この香水に抵抗を感じるかもしれない。

 

このように賛否両論がある理由の一つは、麝香の香りにあると考えられる。

 

シャネルの五番や一九番など、ジャスミンやバラをベースとした高級香水では、麝香を原料として使っていることが多い。

 

では、この麝香というものは何なのだろうか。

 

驚くべきことに、これはジャコウジカという動物の雄の生殖腺から出る分泌物なのだ。

 

つまり、フェロモンということになる。

 

ジャコウジカは中央アジアやチベットなどに住む小さくて角のないシカで、お腹の下に麝香腺という器官がある。

 

秋になると発情期を迎えた雄は、雌を探して麝香腺から麝香を出す。

 

鶉卵ぐらいしかないけれども、一匹から約三〇～六〇グラムもの麝香が採れるそうだ。

 

ムスクとも呼ばれている。

 

この分泌物はそのままだと、糞尿以上に強烈な臭いがするという。

 

しかし、これを千分の一程度に薄めると、甘くてセクシーな香りに変わるというから不思議だ。

 

シャネルの五番のイメージからは想像しにくい原料かもしれないが、麝香は心臓や呼吸を活発にする効果があるため、漢方では興奮剤や強心剤などにも使われている。